往復書簡㉓ 親愛なる信子さんへ

わたしたちの往復書簡
©エクリール

3月7日

2週間ぶりのお便りですが、そんな気がしないのは、インスタライブでお見掛けしたからでしょうか。短くされたヘアスタイルがとても素敵でした。お似合いです。

さて、こちらベルサイユは今週より急に温かくなりました。先週末はラクレットを頂いていたのに、昨日はコートを脱いで外に出掛けられるほど。そちら東京は牡丹雪が舞ったと聞いてびっくりしています。三寒四温とはいえ、雪は想定外ですよね。体調などいかがですか?

でも、ご存じでしょうか。「わたし観測」ですが、パリ地方と東京首都圏の天気ってシンクロというか、追いかけっこをしている節があるのです。もしかしたら来週あたりこちらも雪が舞ったりするかも!?

信子さんの、前回のお手紙を読んで、わたしこそ、信子さんの「暮らしのエッセイ」を読みたくなっています。ほんと、毎日の暮らしの中には、大きな出来事ではなくとも、ちょっと嬉しかったこと、実はショックだったこと、悲しかったこと、むかついたこと、などなど、こころの機微が詰まっていますよね。それが積もって何かの行動となることもありますが、大概は何事もなかったように、こころの中にファイルされて終わってしまう。でも、だからといって何もなかったわけではないし。

わたしが尊敬している、カウンセラーの信田さよ子さんの新刊のあとがきがウエブで公開されています。 そこに、『(前略)必要なのは、他者である。自分を助けようとする他者だけではない。自分に似た経験をした他者、類似した他者の存在こそ必要なのではないか。』という一文がありました。信田さんは、トラウマ的な体験をされた方、渦中にいる方に向けてそう書いていらっしゃるのでしょうが、これって、誰に対しても当てはまることではないかしら。

信子さんの、暮らしの中での思ったこと、感じたことを読んだ誰かは、「あ、わかる」「わたしもそうだった」という気持ちになる、それだけで、誰もが持っている小さな孤独が癒されるような気がします。
また、「時には問題提起もしたい」というのにも大賛成です。事なかれ主義ではありませんが、穏やかさを求め、問題提起を避ける風潮もあるけれど、実際の社会は問題だらけ。声を上げていくのは大切です。ぜひぜひ書いてください。エクリールで良ければ喜んで掲載させていただきます!

また、わたしの小説をエクリールのサイトに掲載していくというアイデアをいただきましたが、いいですね! オンラインサロンのローンチが落ち着いたら、取り掛かりたいと思います。食べることが好きな人は料理も好きなことが多いのと同じで、わたしも読むことが好きで、書くことも好きになった派で、日本から持って帰って来た本を読みまくっている昨今、書きたくてうずうずしています。

そうそう、先日、エクリールのお仲間たちと、プロファイル写真の話になりました。「わたしらしい写真が欲しいんだけど見つからない」というところから、「美紀さんはどんな姿が美紀さんらしいと思うのか」と聞かれ、ぽっと頭に浮かんだのは、本を読んでいる自分の姿でした。冒頭の写真の絵画のようなイメージです。そうそう(2回目!)、この絵画、23年10月にベルリンの美術館での展覧会で観たものですが、誰の作品なのか映してくるのを忘れてしまって……。もしご存じの方いらっしゃれば教えてください。

いつか、自分らしい自分の姿は、「小説やエッセイを書いている自分」だと自信を持って思えるようになったらいいな、と夢みています。

ではでは、この辺でペンを置くことにします。……なんて、こんな表現も過去の遺物ですね。今の時代は、「この辺でタイプする指を止めます」、なのかな。
東京地方の天気が落ち着いて、あたたかな週末を迎えられますように。
お便りをたのしみにしています!

かしこ
美紀

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