往復書簡㉜ 親愛なる美紀さんへ

わたしたちの往復書簡

美紀さんのお庭、美しい藤の花。まるで上品な甘い香りがこちらまで漂ってきそうです。藤色、大人の女性という感じで良いですね。ダリヤもすみれもキンポウゲもたくさんの花々が庭に咲いて春を楽しまれている様子が伝わってきます。

うちの方は窓から見えるもみじの新緑が美しく力強いです。今日は特にすっきりと晴れて気持ちの良い日でした。その前によく雨が降っていたので嬉しさは一際。暑すぎず、蚊もいない日本のこの時期が好きです。

植物から人生のことに置き換えて考える。美紀さんが今、哲学者のように色々なことを考える時期にいるのかなと思いました。私は今、目の前のことをこなすのが精一杯で俯瞰して物事を見られないでいます。寝ている間も何かに追い立てられている感覚というのでしょうか。

昨日とても久しぶりに妹と姪に会ってランチをすることができました。姪が4月に大学生になって、その大学と私の仕事先が近くて「ランチをしたいときにできるようになったんだ」と気づいて声をかけました。

大学生になってからの感想などを聞きつつ、妹と姪の食事中のさりげない母娘関係などを垣間見ることができて面白かったのです。私にも娘がいるけれど、その関係とは少し違っているな、などと考えながら。妹と姪の関係は友達のようにお互いが平等だと感じました。一言で言ってしまえば姉妹のよう。私は娘とは基本的に仲は良いものの、妹と姪に比べると「親と子」という関係です。私のどこかに「親は友達ではない」という観念があるのでしょうね。娘が小さい時はなんでも知っていたけれど、思春期以降は知らないことがあるのが当然で、彼女の大切なことは友達や恋人が受け止めてくれるのだろうと。こういう考え方は単に個人的なものなのか、それともフランスに影響されたのか、どうなのでしょう?美紀さんはご自身のお子さん達との関係も含めてどう思われますか?

と、いろいろ考えるきっかけになったランチをして良かったと思いました。行く前は「あれもこれもやる事があって忙しいのに」なんて少し思っていたのです。1日のやるべきことだけに時間を割いていると心の余裕がなくなりますね。無理にでも時間を作って人との交流をすることで、違う見方や考え方に触れられて、キュッと締まっていた心が緩んだ気がします。人生にはもっと大切なことがあるなあ、なんて。

美紀さんのおっしゃる通り、私は言葉が好きです。でも言葉が好きなのはやはり人との交流に興味があるからなのでしょうね。だから美紀さんも私も「人」が好きということでしょう。

今、フランス語の学術的な文章を書いているので文章が硬くなります。フランス語で硬い文章を書いていると、日本語を書くときに漢字が増えるな、と面白い発見をしました。定期的に書いている往復書簡だからこその定点観測ですね。

新教皇が決まったと今朝のニュースで見ました。敬虔なカトリックのドメストル家にとっては大切な出来事ですよね。私はなぜか世界中に散らばっている家族や友人達のことを思いました。世界が平和であると良いなあと。

Bon week-end!

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