『テーブルの往復書簡 ベルサイユ―東京』⑬

わたしたちの往復書簡
©エクリール

3月13日金曜日
ベルサイユ

親愛なる信子さんへ、

春の花が満開のベルサイユよりこんにちは。今年は、春の訪れが早かったように感じています。もしかすると毎年そう言っているかもしれません。季節がぴゅんぴゅん飛び去っていくように感じます。

そんなこともあり、先月半ばからは、春らしいテーブルコーディネートをしています。
どんなテーブルにしようかと考えるとき、多くの場合、わたしは色から入ります。「今日はブルーな気持ちだな」とか、「この季節はこの色でしょう」というふうに、まずは色。
そこから、テーブルクロスを考え、花を考え、なんなら、お料理もテーマカラーに合うものは何だろうと、半ば本末転倒な考えをすることもあります。冒頭の写真は、ピンクをテーマカラーにしたテーブルです。

花もピンク
お菓子もピンクに

一旦、色を決めると後は簡単なものですね。このアプローチは、義理家族の田舎の家からヒントを得たのです。テレビ『プラチナ・ファミリー』でも取材して頂いたあの田舎の家は、寝室が「色別」になっているのです。青の部屋、ピンクの部屋、黄色の部屋、といった風に。フランスでは多くの家がそのようにしていますよね。

画像
田舎の家のシャンブル・ブルー
動画は、アマゾンプライムにて配信されている
『プラチナファミリー』で観て頂けます。

この田舎の家を初めて訪れたときのことは未だに覚えています。「アナタはシャンブル・ブルーをお使いになって」と案内され、青いトワル・ド・ジュイでまとめられた部屋に足を踏み入れたときのわたしは、はたから見たらコメディさながらだったと思います。「こんな素敵な部屋で寝るの?」と嬉しさと当惑が入り混じり、しばしフリーズしていましたよ。

それから20年余り。
もう少し冷静な目でシャンブル・ブルーについて思うことは、あそこには侘び寂びとか、陰影という感覚はないのだな、と。あるのは絵画的な美しさ、西洋的な美しさなのだな、と。そうそう、壁の色からカーペットやカーテンを一色で統一すると飽きがくるのでは、と20年前は思ったけれど、意外とそんなことはないものですね。
また、田舎の家を思うとき、青い部屋で書き物をしている自分や黄色の部屋で休む幼き日の息子たちの寝顔が『絵画的』な思い出として蘇るのですよ。これは、色の為せる技なのだと思います。

ブルーのテーブル。横浜窯の文明開化シリーズのお皿で。

……つい脱線してしまいました。お伝えしたかったのは色の力です。色は、「春らしい」とか「爽やかな」とか、そういう「世界観」を繰り広げるためには一番簡単で効果的だと思うのです。「簡単」で「効果的」。ここにわたしは、フランス人の合理的な考え方を感じます。信子さんはいかが思われますか。
フランス人は、実はとっても合理的な考え方をする人たちだと思うのです。このフランスの合理的なところに、優柔不断なわたしは多くのことを学んできたような気がします。一つにはテーブルのこと、一つには装いのこと──気づくとコーディネートまで同系色が多いわたしです。あとは生き方も、かな。とまたまた脱線しそうなので、これはまた別のところで、別の時にお話できれば、と思います。

ところで、信子さん、その後体調はいかがですか? インスタグラムを拝見している限りでは、しっかり回復されたようにお見受けしますが、そうであることと願っています。
春は何かと不安定になりがちですので、お互いに、自分の心身をウォッチしつつ、ですね。
読者の皆様も、寒暖の差がある季節ですので、どうぞご自愛くださいね。

かしこ
美紀

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