わたしのふらんす⑨ ドーヴィルにて

わたしのふらんす
©エクリールMiki

写真は、ドーヴィルの海辺です。9月の初めに行って参りました。パリ北西にある海辺の街で、ココシャネルが愛した街、また高級リゾート地しても知られている街です。

地域圏としてはノルマンディーに属していて、ゆえに、街中の建物は木組み様式。コテージ風でかわいらしいのですが、同時に大人なアールデコ時代の名残もそこらかしこに見受けられ、ドーヴィルにしかない雰囲気を漂わせています。

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訪れた時期が季節外れだったせいか、リゾート地につきもの喧噪はなく、シックで大人な空気が漂うドーヴィルにハートを射止められてしまいました。
普段は文句ばかり言っているけれど、「フランス、やっぱり君は美しい!」とひれ伏したくなったわたしです。

その美しいドーヴィルの海辺で、世にも美しい光景を見ました。

ドーヴィルで見た光景①

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広い砂浜にはいくつかのグループが屯っていました。イギリス人と思われる中年の男性グループはスポーツ仲間なのかしら。家族連れもいます。若者グループは楽しそう。大西洋ですし、ノルマンディーですし、水温は18℃くらい。そこに若者たちが飛び込んだり、冷たい海水を掛け合ったりしてきゃっきゃ騒いでいます。でも煩くはなく、ただただ若さが弾けていて微笑ましい。そんな彼らをぼーっと眺めていたのですが、あら! ふーん、そんなこともあるんだ。 

何がそんなにわたしの目を引いたかというと、若者グループの構成です。黒い肌の男子が3、4名、白人風の男子は2、3名、黒い肌の女子が1人、白人風の女子は2名。年の頃は17~20歳の間と見受けました。

こんな風に、こんな自然に、肌の色が違う若い男女が戯れている姿を見るのは、もしかしたら初めてかもしれません。電車やメトロで見かける若者たちは、黒人ならほとんど黒人、白人ならほどんと白人、という感じで肌の色が揃っていることが多いのです。こんなに均等な混じり合いは珍しいのです。そういえば男女混合グループもあまり見かけないかも? 

このドーヴィルの若者たちは大音量の音楽も掛けておらず、好感度100%でした。

ドーヴィルで見た光景②

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ドーヴィルのホテルといえば、ル・ノルマンディ。
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翌日、ホテルの部屋を出ると、「ボンジュール、マダム」と挨拶する声が。清掃係の方です。一瞬目を引いたのは彼女がいかにもフランス人の、そして白人だったこと。
というのは、フランスでは清掃係は黒い肌の人が多いのです。白人、それもフランス人の白人というのは珍しく。ちなみにホテルの清掃係だけではなく、うちの市のごみ収集係も9割が黒い肌の人達。
わたしも清掃業は立派な業務だと思っていますし、清掃業に就くことをどうこう言いたいのではないので、どうかご理解くださいね。ただ、フランスでは職種によって肌の色に傾向があるという事実をお伝えしたいのです。

ドーヴィルで見た光景③

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その午後、また海岸に戻ってのんびり過ごしていると、かわいい男女の幼児を連れた家族が近くに陣取りました。黒人ファミリーです。夫婦はアイボリー色でまとめたシックな装いで、それが黒い肌によく似合っています。子ども達は元気いっぱいで波打ち際まで走っていく。お父さん、お母さんは慌てて、ズボンの裾を捲り、子ども達が危ないところまで行かないようにと追いかけます。家族全員がドーヴィルの風景に溶け込んでいてとっても素敵でした。

それだけのことです。何のことはない光景。自然に多様性がある光景。
でもそれがこの世のものとは思えないほど美しく見えてしまったのです。
フランス全体が、こういう風だったらどんなにいいだろう、と思ったのですよ。
肌の色や性の違いなど気にせずに、共存できたら……。

サンドニの光景

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五輪では、田中希美さんが走ったスタジアムです。
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フランスの多様性について語るなら、サンドニは一つの例でしょう。
オリンピックのメイン会場となったスタッド・ドゥ・フランスというスタジアムがある街です。パリの北郊にあります。スタジアムとその周辺は近代的に整備されていますが、少しでも離れると雰囲気はガラッと変わり、殺伐としたスラム街が広がります。

住民の多くは北アフリカやマリから来た肌の色が濃い移民由来のイスラム教徒で、道で耳にするのはアラブ語ばかり。犯罪率、貧困率、違法移民率も高いエリアで、日中でも目を虚ろにして道端でふらふらしている人を多く見かけます。男性はジャージか民族衣装、女性はベール姿、いや、目だけかろうじて見えるような黒装束姿の方が多い? ここ、フランスじゃないよね?と頬を抓りたくなる、そんなエリアが、フランスには幾つもあるのですよ。

移民問題ね……

移民問題なしに今のフランスは語れません。受け入れ人数が多すぎて同化政策が間に合っていないとはよく言われることですが、紛争から命からがら逃げてこられた難民の方々を助けないというのも人道的にどうなのか。一方で移民側も、受入国フランスに幻滅したのか、フランスに対する憎悪や拒絶を感じることが多くあります。同化など絶対しなさそう。

そもそも同化を求めるのは正しいのか。
わたしはドーヴィルでみた光景が美しいと思いましたが、個性を崇める今の時代、フランスに同化することを求めること自体が間違っている?

かといって、サンドニの有様も正しいとは思えないよね?

先ほどから「肌の色」「移民」と書いていますが、はい、わたしもその一人です。そうなのですが、サンドニにいる移民系の人達が歩んできた道や考え方を理解するには、あまりにも距離がありそう。そして共通する言語をもっていないような気がして、絶望的になってしまうのです。

……すみません、オチなく終わります。
次回は10月5日に投稿したいと思います!

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