往復書簡㊻:親愛なる美紀さんへ

わたしたちの往復書簡
©ペレ信子

8月15日、
と日付を書いて気がつきました。今日は日本の終戦記念日なのですね。終戦して80年とは…。それなのに、今朝起きて最初に開いたインターネットのページで大きく取り上げられていたのは、マクドナルドのハッピーセット問題。おまけのポケモンカード目当てで大量購入された食品の廃棄についてでした。

私が小さかった頃はこの時期には原爆の話、戦争の話を年長者から聞くことが多かったのですが、今は年長者の多くが戦争の記憶がない世代になってきたのですね。終戦して80年も、と思うけれど今も地球のどこかで戦争がある、と心に留めるだけでも、この日付を覚えている必要があると思うのです。

戦争の話で恐縮ですが、フランスでは「Victoire du 8 mai 1945(1945年5月8日の勝利)」として5月8日が終戦(ナチスドイツの降伏)として今でも祝日ですよね。夫と知り合った時に、こんな基本的な常識・見解についても、フランスと日本の間に違いがあるのかと衝撃を受けました。

さて話は変わってパリ・東京の街のこと。美紀さんの好きな古き良きパリのエリア。私も大好きです。私の場合はパリを知り尽くしているわけではなく、その辺りに土地勘があるというだけです。でもその土地やエリアに惹かれてよく行くようになったというのは、何か感じるものがあるのですよね。パリに住む子供たちに聞いたところ、やはり最初の頃はいろんな場所に行ったけれど、結局は落ち着く場所があって、今はそのエリアばかりに行くとのこと。姉と弟でお気に入りの場所が違うのも面白い。全く違うタイプの学校に行っているからかもしれません。

では東京でどんなエリアが好きか、というと私は圧倒的に神楽坂界隈です。小さい時から行き慣れた場所ということもありますが、やはりフランスが感じられる少し古風な東京、というなんとも魅力的なハイブリッド街だからです。私の主な生息地はこの飯田橋界隈から少し北へ行った辺りまで。高校は東京の西側に行っていたのですが、異文化体験と言いましょうか、今でも西側を主な生息地にしている友達と会ったり、南側や西側の新しい場所に行くと刺激を受けます。

神楽坂は近年大きめなビルが建ったりもしていますが、夏には恒例「阿波踊り」、通りの中くらいに「毘沙門天」、風呂敷専門店や和菓子屋さん、もちろんフランス語の「東京日仏学院」もあります。数年前までは川を渡った千代田区側に東京のリセ(幼稚園から高校まで)がありました。フランス語学習が盛んな暁星学園や白百合学園が近くにあるのも偶然ではないですよね。面白いミックスなんです。

定番の散歩は、チーズ専門店「アルパージュ」を目指して歩き始めます。神楽坂沿いに小さな道がいくつもあって、そこにはカフェやレストランや食器屋さんや小物屋さん、みんなそれぞれの「好き」を商売にしているのが伝わってくる。新しいお店をのぞいておしゃべりしたり、アルパージュで最近のチーズの傾向について教えてもらったり、新しいパティスリーのお菓子を試したり。帰りにかわいいお花屋さんで花を購入して帰路に着く、というのが私の好きなルートです。と書いてみて、食べ物が多いですね。そうそう、今回のパリ滞在でも気づいたのですが、私は外出時間におけるおしゃべり時間の割合が大きいみたいです。パリで出会った一期一会の素敵な人たちのお話をいつか書きたいです。

美紀さんの定番ベルサイユ散歩について、今度教えてくださいね。連れて行っていただいたパン屋さんも可愛くて美味しかったです。

8月後半も楽しい夏を!

信子

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