わたしのふらんす ③階級を知る

わたしのふらんす

「わたし視点」からフランスを語る「わたしのふらんす」シリーズ、第3回目です。今回は、2000年のフランスに時計の針を巻き戻します。

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わたしが現在のようにフランスをベースに暮らすことになったきっかけはInsead への留学でした。30代初めの頃のことです。
場所は、パリではなくフォンテーヌブローという城下町。そこに一年滞在しました。
そこで知ったフランスの新たな一面といえば、階級というものでしょうか。

わたしが留学したのは2000年のことですから、まだ日本人がこぞって海外留学していた、その潮流に乗ってのこと。なぜInseadにしたかというと、米国のMBAは2年のカリキュラムなのですが、Inseadは一年コースだった、これにつきます。

何しろ年齢的にも若くはなく、さっさとディプロムを得てキャリアを構築したいわたしにはぴったり。また授業は英語で行われるとのこと。なら「フランスでもいいか」となり。
そうなのですよ、「フランスに憧れて」ではなく、非常に現実的で合理的な理由で選んだ渡仏でした。t一年でおさらばの予定だったのに、よもやそれからこの地に居つくことなるとは。人生は小説よりも奇なりとは本当ですね。

……前置きが長くなりましたが、Inseadで知ったフランスについて語ります。

留学に関して、先日ツィッター(現X)で面白いグラフを見かけたのでシェアを。https://twitter.com/doughimself/status/1780154175231512912
92年から30年間の、米国へ流れ込んだ留学生の国別の人数の変化を棒グラフにしたものです。1位だった日本が今やベストテン外に落ち、代わりに中国やインドが桁外れの数でトップ争い。考えさせられるものがあります。

おお、ラテン語!

Inseadでは各国からの留学生が集まっていましたが、欧州から来ている人はやはり多く、おぉ!と思ったことが幾つか。

まずラテン語。
あの頃のわたしは、ラテン語といえば「アベ・マリア」くらいしか知りませんでしたが、Inseadに来る欧州人たちは、ラテン語の知識があるのですよ。教会にて、学校にて、あるいは専門分野として、などなどレベルに違いはあるものラテン語を知っているのです。そして、たまにラテン語でジョークを放ったりして(ラテン語風にふざけて造語しているだけなのかもしれないけれど)、皆が笑い合っているときなど疎外感がありました。

欧州人の中には、もちろんフランス人が含まれるわけで、その後こちらに住み着くようになると、フランス人の普段の会話の中でもラテン語の慣用句や語彙が用いられること多いことを知ります。

ですので、フランスに来られる方、特にアカデミックな活動をされる方、企業などで仕事される方は、ラテン語を少しだけでも知っておくと こころ強いと思います。ちなみに、フランス人にとってのドラえもん(みんなが読んでいる、という意味で)のようなコミック本『Astérix』には、おふざけラテン語がよく出てくるので、ラテン語に馴れる第一歩、そしてフランス人DNAを理解する第一歩としてお勧めします。

おお、階級!

Insead時代のわたしのスタディグループにMというフランス人の男性がいました。キャンパスではこのスタディグループで時間を過ごすことが多いのですが、時折グループ外の人々が、ふらーっとやってきてはMと談笑していました。

Mは、物静かでどちらかといえば地味な人。それなのに、この人達はわざわざMのところに話しかけに来るんだね、と少し不思議に思っていました。

ふらーっとやってくる人々は、皆、フランス人かフランス人の血を引く欧州の白人で、ダブルバレル・ネーム(ハイフンで二つの姓が繋げられた二重姓)だったり、どこかセレブ感がある人だったり、装いがお坊ちゃま風の人だったり。そういえばMも定冠詞付きの苗字か、と気づきます。

軽い好奇心から、彼らが談笑している様子を眺めていると、皆いつもと表情が違うんですよね。まるで幼馴染と再会したときのように安心しているというか。いつもの、「オレってできるんだぜ」という虚勢を外した表情なのです。
一方で、そんな優しげな「談笑」なのに、そこに入ろうという気は起きませんでした。なんというか、わたしが加わることは望まれていない、と感じさせるものがあったのです。

段々見えてくることには、この人達は、何等かの繋がりがあるらしいこと。その繋がりというは、家同士が遠い親戚だったり、家系間の付き合いがあったり、共通の知人がいたり、若き頃に同じパーティーに参加したことがあったり、という類のもの。

もしかして、これが噂の「階級」かしら? 
早速Mに、「貴方ってひょっとして上流階級の人?」と単刀直入に聞くと、笑いながら「そんなものは現代のフランスにはないよ。でも爵位ということなら伯爵だけど」と返されて、今度はわたしの方が大笑いしました。だって笑うしかないですよ。さらに確認すると、「談笑グループ」の面々も同じような階級の人達で、再び、おおっ! となったのでした。

上流階級の人々は、苗字から「どこどこの家系の人ね」と分かるみたいです。狭い世界だから、家同士の付き合いがあったり、共通の知り合いがいたりするらしいのですよ。
また、若い時にはラリーと呼ばれる子女子息の社交界があり、大人になってからは大人の社交界があって、そこでは、上流階級の作法に則った会話があり、付き合い方があるらしく。
そこら辺の細かいことは後々学ぶことになるのですが、このInseadでの「談笑」で、そういう階級があることを知ったのでした。

フランス人はねちっこい

Inseadでは、他のフランス人がMに関して、「あいつはどうせ縁故があるだろうからジョブ・サーチも楽勝だろう」とか「あいつは貴族といっても弱小貴族だから」といったやっかみを耳にすることもありました。
そんなやっかみから「フランスの一般ピープルは、誰が上流階級なのかわかるんだ」と知りました。名前というのが一つ、立ち居振る舞い、話し方、装いも一つ二つ三つ。微妙なことが重なって、「ああ、あっちの人なのね」と分かるようです。
でも、やっかむ人達は、グランゼコール出身の立派な企業に勤めてきた人達ですよ。アンタたち、妬む必要などないでしょうに、なぜ上流階級に拘る? と驚きましたっけ。
フランス人の、意外とねちっこい性質をこの時知りました。

また、わたしも余計なお世話で、「こんなこと言われているよ」とMに伝えてしまって。
するとMは、「貴族なんて、いまどき弱小もへったくれもないのに。ギロチンに処しただけでは気が済まないのかねぇ」と呆れと諦めの苦笑を浮かべていました。そんな風にギロチンを持ち出すMに、「おおっ、貴族! 革命のトラウマを引きずっているなぁ」と、再び こころの中で小さく驚いたわたしでした。

その後、そのMと結婚したので実情もよくわかっていますが、本当に、現代社会において、貴族がゆえの縁故就職はないですし、得することなんて、ホントないです。皆、普通に、企業のホームページ経由で応募したり、LinkedIn使ったり、ヘッドハンター頼りだったり。それなのに、勘違いされて妬まれて。
貴族もつらいよ、なのです。

次回は、20日までに投稿します!

正直なところ、書き出したときは、フランスの悪口が多くなるだろう、と思っていたのですが、3回目にして、フランス愛がじわじわ湧いています。
「え? ネガティブ多めじゃない?」
と思われるかもしれませんが、このネガティブな部分も嫌いではないのです。ネガティブさがあるから味わい深くなるというか。

そう、フランスは複雑なんですよ。美醜混在で、優しくて残酷で、情が深いけれど切る時はばっさり切るし、すぐストしたりと感情を遠慮なく放出するようでいて結構ぐっと堪えるところもあったり。階級に関しても、このようにあるようでいてなかったり(Mも、結局わたしのような外国の一般人と結婚してますしね)、というパラドックスだらけの、とっても人間味あふれる国民性の国なのです。

そんな話でもよろしければ、また読んでくださいませ。
次回は、フランスという学歴社会について書こうと思います。自由の国、奔放な国、平等の国、というイメージのフランスですが、国を支えているのはエリート企業のエリートたちで、その道に乗るには やはり学歴大切、というシビアな一面があります。
うん、花と愛と夢の国というよりは、現実的で合理的な国というのが、わたしのフランスです。

これからは、毎月5日と20日までに投稿します!(と自分に課する)
宜しくお願いいたします!

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