わたしのふらんす⑫ 年齢なんか関係ない!? マダムたちの普段着

わたしのふらんす
©エクリールAmie

フランスの「普段着ブティック」

 ZARA、Promod、Massimo Dutti、Mango、Sud Express……フランスでよく見かけるブティックを思いつくままに挙げてみました。日本にもZARAはありますよね。他のお店も上陸しているのかしら。

 ここに挙げた店は、価格帯はZARAとほぼ同レベル、クォリティーも、スタイルも大差ないかな。電車の待ち時間や、スーパーへの買い出しのついでに、わたしもよく覗いています。

あれ? 若向けのブティックだと思っていたけれど……

 中に入る度に、ひそかに驚くのは客層のその広さ。色んな世代の人が物色しています。お母さんと来ている若いコや30代前後の方達もいれば、60、70代の方達もよく見かけます。……いや、年齢層高い方の方が多いかも。ちなみに、義母は80歳になりましたが、彼女も通りかかればこれらのお店を覗いているようです。店構えを見ている限りは、ZARAもPromodも、30代前後をターゲットにしているように見受けられるので、わたしなどは遠慮がちに敷居をまたぐのですが、入る度に、「ここはフランス。そんな遠慮は必要なかった」と思い直します。似合うのならば、着こなせるのであれば、年齢なんて、関係ない。それがフランスなのです。

Bon Chic Bon Genreなブティック

 もう一つ、わたしがよく覗く、……というか頼りにしているブティックがあります。BCBGなラインアップの、Acantheというお店で、フランスに何店舗か展開しているようです。
 BCBGというのは、ボン シック ボン ジャンル の略で、品があるベーシックな装いのことを指します。80年代には日本で流行ったスタイルですが、昨今は聞かなくなりましたね。でもフランスの上流階級では未だに定番なスタイルとして残っています。
 
 ベルサイエ(ベルサイユの住人のこと)の8割は、ここで普段の服を調達しているのではないか、とわたしは疑っています。
 秋冬ですと、ウール100%もしくはカシミア製のプレーンなセーターが、ベーシックカラーとそのシーズンの流行色何色を加えてずらっと揃っています。同じ色の、カーディガンやジップアップスタイル、タートルネックに、ショールやマフラー、帽子というセットもある。男性モノもしっかりあります。フランスのムッシューたちお得意の、赤や黄色といったカラフルなチノパンやコーデュロイのパンタロンがずらっと揃っています。
 品質はしっかりしていて、価格は安くはないけれど法外な値段ではない。有料のメンバーシップに加入すると、セールでなくとも30%オフになる……などなど、気が利いているのです。ただ、ここはシーズン中に品の入れ替えがありません。なのでシーズン初めに一度見ておけばOKなのですが、買い物のついでに時折覗きます。それはなぜか。

先輩マダムに学ぶ

 このブティックのマヌカンさんのファッションを見るのが楽しみなのです。マヌカンさんといっても、おそらく年の頃は、60歳、いや70歳? もしかしたらもっと上かも。そんなグレイへアのマダムです。小枝のように細い身体でいつもきびきび接客していて、そんなところも素敵ですが、この方のファッションセンスが大好き。
 ある時は、フランネルのプリーツスカートに、同色のタイツで、髪はシニヨンにまとめて。――これ、もし肩までの髪を下ろして、いつものようにカチューシャで留めていたら、おばあさんが少女風にコスプレしているみたいで、かなりホラーだったと思うのです。それを、髪をきちっとまとめて、お年相応なスタイルにしたから、プリーツスカートも違和感なくはまったのでしょう。またある時は、ワイドなジーンズに、細い首をグレイのタートルネックで隠し、ウエストにはターコイズをあしらった太目のベルト。攻めた感じがかっこよかったこと!

Kitsuneのマダムも素敵!

もうお一人、装いもお人柄も大ファンの方といえば、Kitsune Caféの石井庸子さん。マダム庸子のファッションセンスにはいつも脱帽しております。ご自分のスタイルをよーくご存じで、ホントに素敵です。

似合うスタイルは変わりますね

 昔より、ファッションはエイジレスになっていると思うのですが、でもやっぱり、年齢によって似合う色、似合うスタイルが変わってくる、ということは皆さんも経験済みでしょう。
 わたしは、もうスリムパンツは無理かな、と思っています。履くならば、何か工夫が必要だと思う。もう昔のような「腿の迫力」が出ないので、寂しさが漂ってしまうのです。その代わりに見つけたのが、このごろ流行りのワイドジーンズ。そう、Acantheのマダムが履いているのをみて、「真似してみようかしら」と手を出したのでした。見た感じも気に入りましたが、何よりも楽で楽で。着心地良い、履き心地が楽、というのも服選びの大切なポイントなっています。

ルールは自分で作る

 ただ、年取ったから「スリムパンツはダメ」という話ではありません。「年取ったから、これはダメ」、という一律のルールは、フランスにはありません。似合う似合わないは人ぞれぞれ。年取ったからミニスカートが似合わない人もいれば、年取ったからこそ似合うようになった人もいると思う。年取ったから体の線を出さない服の方が似合う人もいれば、イケている人もいる。フランスの、シックなマダムたちはそこら辺のことをよくわかっているのでしょう、だからZARAも覗いて、気に入ったアイテムがあれば普段の装いに取り入れるのでしょう。きっとそうやって、自分をアップデートしているのではないかな。
 
 わたしも、フランスの先輩マダムたちを見習い、固定観念など拭い捨てて、いつまでも「わたしらしく」よそおいを楽しみたいな、と思います。

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