2026年1月9日、ベルサイユ
親愛なる信子さんへ、
新春のお慶び申し上げます。もう9日なのですが、新年の挨拶をするたびに、何かが新しく始まるような弾んだ気持ちになるので、あと少しだけ「新春のご挨拶」を続けさせてください。
本当のところは、平常運転に戻らなくてはならない自分への、はっぱかけという意味合いもあっての「新春のご挨拶」なのかもしれません。
というのも、わたし、年末年始が苦手なのです。
「暮れから忙しくなってノエルをクライマックスに、26日から急にスピードダウンする」という、フランスの年末リズムも、
「お正月は何かしたい気もするけれど、身体は疲れているし、家族も足並み揃わないし」という、あのまとまらない感じも、
大掃除もせず、お節も作っていない、というギルティ―感も(ならやればいいのですが)、
……苦手なのです。
そんなアンニュイな気分で迎える元旦の朝、いつもは純白の麻のテーブルクロスで気分一新を図るのですが、今年は、何か白ではなかったのですよ。白を選ぶときというのは、「白の心境」のときですよね。それは服でもテーブルクロスでも同じで、妥協で純白は選べない、そんなことありませんか?
で、今年の元旦は、白ではないな、かといってベージュでもないし、としばし考えて、ノエルに貰ったばかりの、この赤い花のクロスを選んだのでした。インド綿のようなさらっとした風合いですし、冬っぽくないのですが、色合いの瑞々しさに惹かれました。

まだ家族は寝ている元旦の朝、そっとサラマンジェ(食堂)に降りて行って、ぱぁーっとクロスをテーブルの上に広げます。一つ一つのアイテムを置いていくと、テーブルが生き生きしてくるのを感じます。セッティングが終わり、全体を眺めると、わたしもだらだらが消え、しゃきっとしていて。
信子さん、テーブルっていいですね。クロス一枚でサラマンジェの雰囲気も変わるし、わたしもしゃきっとするなんて、なんてお得なんでしょう。
毎日の暮らしは、こんな小さなことから彩られるのでしょうね。「人生のターニングポイント」というフレーズをインタビュー記事などで目にしますが、ターニングポイントというものは実は毎日あるのではないかしら。
髪を少し短くする
いつもと違う道を選ぶ
新しいレシピを試す
知らないお茶を飲んでみる
――いや新しいことでなくてもいいのかも。
久しぶりに友達と連絡と逢うとか、
お花を変えてみるとか、
テーブルクロスを変えるとか……。
そんな何気ないことから、気分が変わったり、今まで気づかなかったことに目が向いたり。それだけで、その日が少し特別な日になるのだと思っています。
さてさて、2026年も幕開けしましたね。
信子さん、そして読者の皆様にとって、「小さなターニングポイント」がたくさんあり、
喜びが多い一年でありますように、こころより祈っております。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
ドメストル美紀
***
今までこちらでご紹介したテーブルは、おもてなし用のテーブルばかりでしたが、今回は、わが家の普段着のテーブルをご紹介します。
普通の日は、前菜(割愛することも多々)、メイン、サラダ、チーズまでをディナープレートで済ませ、デザートやフルーツの時にお皿を変えることがほとんど。ですので、写真ではディナープレートに、前菜用の緑のトーキングプレートを重ねましたが、これは「映え」狙いです、はい。
クロスの上に、汚れを拭き取れるタイプのプレイス・マットを敷く、という、テーブル・ルールとしては本来はNGなことも気にせずにしますし、ナイフレストも使わないですし、セルビエットも無造作に畳んで置くだけです。

このプレイス・マットのお陰で、テーブルクロスは、1週間は軽く持ちます。
テーブルにこぼれたパン屑などは、日本の職人さんが作られた、この衣類用のミニほうきでささっと集めればOK!

習慣になるとほんとうに楽なので、日本の皆様にも、ぜひテーブルクロスを普段使いしていただきたいな、と思います。できればビニールコーティングがない、綿や麻といった天然素材で丈夫なものを、長く、長く使っていただきたいです。
そうやって長くお付き合いしていると、まるで着慣れたシャツのように、クロスがしんなりとテーブルに馴染んでくるのです。そしてクロスを広げる度に、楽しかった食卓が思い出され、なんとも温かい気持ちで食卓に向かえるようになって……。
暮らしの中にテーブルクロス、ぜひ取り入れてみてくださいね。

