おはようございます。お返事を読んでいて美紀さんが早朝に書簡を書かれていることが多いことに気がつきました。私もだんぜん朝派です。と言っても主義があってそうしているわけではなく、いつの間にか夜は早く眠くなって朝は早く目が覚めるようになりました。今日も家中が静かな時間に書いています。
今年の東京の天気は変ですよ。そんなに暑くなくて冷たい雨の日が多いし、かと思うと急激に気温と湿度が上がったり、何を着ればいいのか困ります。
そういえば、美紀さんのエクリールサロンのアカウントで「フランスの衣こよみ」というコーナーがスタートしましたね。作られたファッションでない実際のコーディネート、とても興味を持って見ています。というのは、パリのファッション感覚と東京のファッション感覚が違うということを実際に何回も感じたことがあるからです。
子育てで必死だった時代は「あるものを着る」というスタンスでしたが、少し余裕が出てきて久しぶりにファッションでも楽しもう、と東京で洋服を買い込んでからパリに行った時、自分がかなり浮いていることに気がついたことがありました。
その時は日本でマキシワンピースが流行っていて、それも地味な色合いが主流でオシャレとされていました。私は東京で着ていると人に褒められる黒いマキシワンピースを着て、自信満々でパリの街並みに立ちました。そしてウィンドーに映った自分を見てびっくり。まるで修道女がそこにいるみたいでした。
よくよく周りを見ると、夏のパリは短い丈のスカート、細身のパンツ、軽い素材のトップス、明るい色が主流で、体をすっぽり黒い布で隠す姿は目立ちました。急いで、お店に入ってその時の「パリの服」を求めました。胸元が開いた明るい色の服を着ている方が目立たない夏のパリ。SNSなどの普及で世界中が同じ流行になってしまったかと思いきや、いまだ「l’air du temps(時代の空気感)」はスクリーンを通さない。香りのように。(ニナ・リッチの同名の香水がありました)
美紀さんはフランスとの付き合いは何年になりますか?私は初めてフランスを訪れた日から37年経ちます。早朝の飛行機でシャルルドゴール空港に着いて、初めてセーヌ川沿いを散歩した時のパリは美しかった!それから数年間フランスに住み、日本に帰国してからもフランスとは長い付き合いです。。そのフランスの街並みはいつも同じ姿。だからなんとなく人々もそのまま歳を取らずにいる気がしてしまうのですが、昨年の義母のお葬式で30年ぶりに会う親戚の人々の老いた姿に驚いたところでした。
80代とは思えないバイタリティーに溢れる人もいる一方で、活動範囲も好奇心もしぼんで殻に閉じこもっているように見える人も。殻に閉じこもった人には声をかけにくいし、声をかけたところでそれは届いていないように思えて虚しいことも実感しました。自分には関係ない、わからない、と決めつけずに新しいことに興味を持って、声をかけてもらえる80代を目指そう!と思った出来事でした。美紀さんは、きっといつも新しいアイデアにワクワクしている、かわいい80代になっているのではと想像します。
今は不思議の国のアリスに出てくる白ウサギのように「大変だ、大変だ、遅刻しそうだ」状態ですが、この夏はわりとゆっくりフランスに滞在します。ヴェルサイユにはぜひ行きたいと思っていますので、その折にはお会いしましょうね。そしてバーチャルでない、その時のl’air du tempsを感じられるのを楽しみにしています。
信子


