往復書簡㊶:親愛なる美紀さんへ

わたしたちの往復書簡
©ペレ信子

フランスは暑いですね(今日は少し過ごしやすくなりました)!いつもは時間的にも空間的にも離れているのに、35℃越えの毎日も生活時間帯も美紀さんと共有しているのは不思議な感じがします。

パリの娘の卒業式は無事に終わり、今は夫の実家です。娘の「卒業式が無事に終わり」と書いたのは、卒業証書がもらえるかという心配というより、フランスの学校が大規模卒業式を執り行えるのか?という不安でした。卒業式は学校ではなくコンサートホールのようなところで行われるし、その上、式後は地下鉄を乗り継いで30分かかる大学の校舎に移動してアペリティフ。3000人近い参加者がどうやって?と思っていました。膨大な卒業生とその家族の人数を考えると、自由気ままなフランスのこと、大騒ぎになるのでは?と。

でも実際は少々の遅れはあったもののすんなりと運んだのです。いくつか理由はあると思いますが、まず卒業式会場自体がコンサートなどのイベントに慣れているため、大人数の観客をさばくのに慣れていたこと。授与式はアメリカ式に卒業生が一人ずつ壇上に上がって教授から卒業証書を受け取ったのですが、その日は(次の日も他の学部の卒業式がありました)二つの学部の卒業式だったので二部構成になっていました。娘の学部の方が後だったので、前半の学部の学生と家族は一部が終わるとパラパラと移動。二部が終わった後はタクシー、地下鉄、歩きなど思い思いに移動する人、いつまでも卒業式会場で写真を撮る人など行動がバラバラで、一時的な満員電車を作ることなく気づけはアペリティフ会場に移動できていました。この辺のバラバラさが結局「どうにかなる」フランスを作っているのだと確信。

美紀さんのお子さん達が小さかった頃の日本への夏の一時帰国で見た、キッチリした準備をする日本となんとなくどうにかなってしまうフランスの違いについて、まさに今回の卒業式で実感しました。頭ではわかっていても目の当たりにすると面白いです。フランス式と日本式、どっちが良いというものでもないですけれど。

私はもともと仕切り屋で準備するのが好きなので、よく「Elle est carrée」と言われます。直訳で「彼女は四角い」ですが、比喩的に「キッチリしてる、几帳面」という意味です。こちらにはもちろん几帳面な人もいますが、けっこう流動的に生きてる人も多くて考えさせられます。自分としてはcarré「四角」の中に入っていると安心するのですが、そこからはみ出て美紀さんの言う「けじめのないフランス人」と言う視点を持つのも人生に潤いを与えてくれるヒントかも、と。

数十年前から私の一部となったフランスで、交通機関が遅れたり、急にキャンセルになってもそう驚くこともなくなり「はいはい、そう来ましたか」と思えるようになりました。それでも、予想を大幅に外れた展開にあたふたすることもあります。そんな私を見て、パリジャンになりつつある二人の子供は「だから、こんなもんなんだってば〜」と笑っています。

多面的に考えるのは大切だとわかっているのにいざという時、臨機応変にできなくていつもの自分の考え方や殻に戻りがちになります。Pluralité(多様性、多元性)、今をときめく言葉ですが、本質的な言葉だと思うのです。

7月になりました。フランスは本格的なバカンスが始まりますね。先日利用した大きな駅はスーツケースを持って行き来する観光客ですでに溢れていました。美紀さんがバカンスに出かけられる前にヴェルサイユでお会いできるのを楽しみにしています!

A bientôt!

信子

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