往復書簡⑭ 親愛なる美紀さんへ

わたしたちの往復書簡
©エクリールNobuko

12月13日 東京


<往復書簡読者の皆様にお知らせ>
2月2日天狼院S HI B U Y Aカフェにてドメストル美紀さんと
「フランスの食卓&マナー講座」を開催します。
お申し込みはこちらまで。
初めて2人で同じ場所に集まり、一緒に開催するセミナーです。

ベルサイユではひいらぎの枝が売られ、本格的なクリスマスシーズンという感じですね。赤い実といえば、隣の家の千両が、元気に真っ赤な実を付けて、太陽に向かって柵の間をすり抜け、うちの玄関前に顔を出しているのが愛らしいです。

パンデピスはフランスの東部からブルゴーニュくらいまでの地方ではパウンド型で焼く形が伝統ですが、ベルサイユの方ではどうなのでしょう。最近おしゃれなフレンチレストランでパンデピスを塩味のものに合わせてアペリティフに使われているのを見ましたが、ブザンソンの方ではもっばらお茶菓子です。毎年作り続けている義母のレシピです。

ドメストル家のノエルの情景、幸せが詰まっていますね。たくさんのプレゼントに囲まれて幸せそうな男の子たちの様子が想像できます。ツリーの下に積み上げられたプレゼント、大午餐会のご馳走とポンポンと開けられるシャンパーニュ、ピアノを弾いたり歌ったり、映画のひと場面のような伝統的なノエルが目に浮かびます。子供は嬉しいだろうなあ。いえ、子供だけでなく大人もぜったい楽しいでしょう。

夫の実家にもたくさんの親戚や家族が集まって、ご馳走とシャンパーニュ、走り回る子供達、というところは同じなのですが、プレゼント交換についてはとてもシンプルでした。というか、シンプルにしたのだそうです。全員がプレゼントし合っていた頃、招待客同士が各人にプレゼントを持ってくると、とてつもない数のプレゼントが積み上げられてしまい、あるとき義父が「もうプレゼント交換はやめよう。みんながこうして1年に1回集まってくれることが1番のプレゼントだ。」と宣言したそうです。プレゼントを用意するのはもともと大変だったうえに、近年は結婚、離婚、再婚に伴う新しいパートナー、連れ子、などなどメンバーが一定しなくて、知らない人にプレゼントを選ぶのが年々難しくなってきたこともあります。

そして昔から夫の実家では、知らない人がクリスマスのテーブルに一緒にいる、というのは珍しいことではありませんでした。(かく言う私もその一人)「一人でノエルを過ごしそうな人がいたら午餐会に招くように」と言うのは義母の家でずっと受け継がれてきたキリスト教徒らしい伝統だったそうです。

義母が亡くなって初めてのノエル。義父は叔母の家の午餐会に招かれています。その叔母のところに「息子の再婚した相手の連れ子が彼女を連れてくる」(ちょっと複雑ですね)と言うことで、叔母の家に泊まる部屋が足りないので夫の実家に泊まることになったそうです。でもこれもよくあることです。連れ子さんと彼女さんはまったく見ず知らずの家に泊まるわけですが、このホスピタリティあふれる受け入れ側と、知らない家に泊まっても大丈夫な社交性と礼儀を身につけた客側、いかにもヨーロッパではありませんか。うちの子供達は同じシチュエーションでちゃんと振る舞えるのかしら?なんて思ってしまいました。

美紀さんは大午餐会のホステスになるのですね。今からそのお話を聞くのが楽しみです。普段の美紀さんはすでに素晴らしいホステスなのですから、きっと幸せな時間をご家族皆様に提供されると思います。ただ無理をせず、お身体には気をつけてクリスマスシーズンお過ごしください。

Avec toutes mes amitiés. 友情を込めて

信子

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