2025年9月12日
親愛なる信子さんへ、
街路樹のティヨールが黄金色に変わりつつあるベルサイユよりお便りしています。
こちらでは秋の訪れが早いように感じていますが、東京はいかがでしょうか。ベルサイユの道々にはらはらと葉が落ちる頃になると、金木犀の香りが漂う、あの芳しい日本の秋がたまらなく恋しくなります。
「秋からは、アール・ド・ラ・ターブルをお届けしませんか」という、信子さんのブリリアントな提案に乗って、今回第一便目をしたためているのですが、どんなテーブルにしようか、と決めるまで色々考えました。こういう逡巡は楽しいものですね。
秋らしさ……、こちらは「紅葉」というより「黄葉」なので、からし色のあのクロスにしようか。
それとも、初めの一歩だし、居住まいを正して、プロトコールにおける最上格の、白の麻地のダマスク織にしようか。
いやいや、信子さんとわたしの間柄なのだから、もっと肩の力を抜いたものがいいよね。
そんな風に考えていたら、「ぽっ」とボルドー色が頭に浮かびまして。
温かみがあって、抑えた華やかさもあるボルドー色。
この秋のトレンドカラーの一つでもあります。

このクロスは、元はカーテンや壁の布張りなど、室内装飾用の布でした。クロスにしてもいけるかも、と思い、端ミシンをかけテーブルに広げたところ、拙宅の手狭なサラマンジェ(食堂)だと、柄が大きすぎるのか、しっくりきません。端にボルドー色の布で縁取りなどをして、引き締めてみたりしましたが、やはり、もう一声。赤いお皿でもあればよかったのですが。
そこで、クロス×赤いプレイスマットという、本来はNGかもしれないことをしてみました。プレイスマットは、本来はクロスの代わりに使うものですものね。
テーブルセンターには赤いザクロのオブジェや、秋ということで、いが栗や庭に落ちていた林檎も置いてみました。
いかがでしょう。女友達とのアンティーム(intime 親密な)なランチ会でしたし、そういうカジュアルな席では、ルールにはあまり拘らなくてよし! というのが、おおらかなフランス流テーブルだったりします。
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この日は、デザートもボルドー色に拘り、プラムのタルトを作りました。
作り方:
わたしのタルト生地は、バターと砂糖を少し焦がし気味なまで熱し、熱々のところに小麦粉を投入して生地にまとめる、という変わったレシピです。
今までは、「美味しいけど、ほろほろ崩れすぎるところが難」だったのですが、この夏、コツをつかみました。
生地にまとめるときに冷水を大さじ3杯ほど加えると、グルテンが程よく出て、焼き上がりの「サクッ」と「ガリッ」というのがいい塩梅になり、かつ崩れなくなりました。
このタルト生地を色づくまで空焼きします。その上に、フランジパン風の生地を敷いて、クェッチュというプラムを散らばせて再びオーブンへ。焼き上がりに、クエッチュのコンフィチュールでグラッサージュして出来上がり!
詳しいレシピは、フランス流タルト生地の作り方 と 洋ナシのケーキ(フランジパン風の生地、半量で)をご参照ください。
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これから始まる、テーブルを巡る往復書簡にわくわくしています!
どうぞよろしくお願いいたします。
かしこ