「視点を変えてフランスと日本から」ペレ信子 x ドメストル美紀 〜察する・察しない文化について②

わたしたちの往復書簡
ベルサイユ宮殿のアンジェリカにて

一つのテーマについて意見を交換するシリーズ。先週は、信子さんから察する文化についてお話がありました。あの話を聞いて、「その男性、ひどい!」と思ったのはわたしだけではないでしょう。察する文化は、フランスにもあると思います。傍若無人に窓のブランドを下げるその男性はひと言、mal élevé マナー知らずですよ。

ただ同じ「察する」でも、日本とフランスは違うところはありますね。
日本は、考え方や文化、倫理観もまあまあ均質的なので、互いの感じていることを察し易いですよね。信子さんの引用では、「ハイコンテキスト」文化。
一方のフランスは、人種的にも多様で、宗教観も異なり、また社会階層のどこにいるかで常識も少し変わりますから、こうしたら喜ばれるかな?という憶測が外れることもあります。わたしは十分に「ローコンテキスト」文化だと思うのですが、その文化人類学者さんは、フランスは「ミドル」だと判断されたのですね。
フランスのもう一つの特徴に、個人主義があると思います。「わたしはこう思うのでこうします。アナタのこと? それはどうぞご自分が好きなように」、というところがありますね。

日仏でもう一つ違うところは、フランスの人は、余裕がなくなると、察しようとしなくなる点。くだんの男性も、TGVに乗った日は嫌なことがあって余裕がなかったのではないかしら。だから自分勝手に振る舞ったという。
日本では、たとえ余裕がなくても、たとえ自分の心身の健康を蝕むことになったとしても、「相手を慮らなくてはならない」という、強迫的なまでの義務感があると思うですが、いかが思われますか? そうできなかったらわたしは人間失格、みたいな?

……なんて、大げさでしたかね。

フランスと日本の違いということで、わたしがよく話す失敗はお料理のことです。手料理を頂いたらしっかりと褒める、それは「本当に美味しくて感動したから」「わたしのために作って下さったことへの感謝から」でもありますが、その気持ちを伝えることで、作って下さった方が喜ぶだろうから、と「察して」伝えるところもありませんか?

ところが、フランスでお呼ばれされたときに、女主人のお料理をほめちぎったら、困惑された経験があります。
理由を推すに、「わたしはキャリアもあって、地域でも活動しているのに、まるでお料理しかできない人間のような貶めをされているのかしら」と思われたようです。また、義母のように教養の高さに自負がある人だと、「お料理のことはもういいですから、別の文化的な話をしましょう」とイライラさせてしまうらしくて。
日本では、お料理上手というのは、美徳に尽きると思うのですが、フランスではビミョー? これは、女性イコール家庭、という概念への反発から、家庭料理・手料理の扱いが、今、デリケートな立ち位置にあるのかもしれません。お料理も立派な文化だと思いますけどね。

最後に、察しない人にどう対応するか、というご質問。フランス人がよく使う手は「とにかくやさしく」でしょうか。

察することができない人が若者ならば、大人目線で子どもに諭すように、やさしく指導してあげる。
信子さんの例であれば、「ブラインド上げたらご迷惑?」と聞いて、もし迷惑だ、と応えられたら、「あら残念、今、夕日がきれいなのよ」と食い下がり、「少しだけでもご覧にならない?きっと良い気分転換になりますよ」とまで踏み込む。きっと相手は降参して笑ってブラインドを開けてくれたかも。もしくは「鬱陶しいマダムだ」と席を移ったかもしれませんが、それはそれでシメシメ、です。

フランスの人って弱い人に寛容ですよね。弱いというのは広義の「弱い」。不機嫌とか、察することができないとか、頭が悪いも含んでの「弱い」。

例①
スーパーで不機嫌なレジの人に、「あらら、ご機嫌斜めなのね? お可哀そうに。何かできることありますか?」と話しかけるマダム。レジの人も打ち終わると、「Au revoir」と笑顔でした。

例②
何を注文しても「ない」づくしの、やる気なさそうなギャルソン。あるのはピーナツだけ、と応えられると、「C’est parfait!」と大げさに喜ぶムシュー。すると「探したらあったよ」といってサラミやオリーブもサービスしてくれました。

フランスには、生真面目にやっている人には厳しくて、弱い人だと寛容という、わたしにはよくわからない不文律があるように思います。ほんと、身を削って、真面目に、察して、慮って頑張っているのに手厳しくあしらわれ、プロとは思えない対応には寛容でなくてはならない、という。
考え込んでも仕方がないので、フランス人の振りをし、「C’est drôle! あぁ可笑しい!」と寛容に笑ってごまかすとしますか。
 
来週はわたしからテーマを投げかける番ですね。(メルマガに間違えてお知らせしてしまいました)
どうぞお楽しみに! 

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