往復書簡① 信子さんへ

わたしたちの往復書簡
©エクリールMiki

2024年9月9日、ベルサイユにて

親愛なる信子さんへ

 温かい雨がしとしとと降るベルサイユよりお便りしております。
 フランスでは、快晴が多い9月なのに、今朝は雨足もつよく、当分止みそうにありません。こんなところでも気候の変動を肌で感じます。そちら東京では、もっと如実に気候が変わっていると耳にしていますが、いかがですか?
 
 9月に入って2週間余り、日本も新学期が始まり朝の通学時など、賑やかでしょうね。ご存じのように、こちらフランスでは9月は新年度スタートの月でもあります。子どもや学生たちは元より、大人たちも夏のバカンスを経て、「こころ新たに頑張ろうモード」が漂っています。
 
 そんな9月、わたしはというと、落ち着かない気持ちを抱えています。なんでなのかな、と自問すると、小さな理由(まもなくサロンを再開するのでドキドキしている、とか、この秋からプール通いを始めたけれど、いつまで続くか、という自分の本気度への疑心、とか)が沸々と頭に浮かぶのですが、ノンノン!
 
 「落ち着かない理由……もっと根底にあるよね」という内なる声が答えます。今、自分の人生が新しいフェーズに入ろうとしている、そのことへの覚悟ができているのだろうか、という、そこなのだと思います。
 
 今、わが家のドラ息子たちは、19歳と17歳。長男は、プレパというフランス特有の高等教育機関の最終学年、次男はリセの最終学年にいます。長男は全寮制なので家は出ているとは言えども、同じベルサイユ市内の学校にいて、でも来秋には、もっと遠いどこかの学校へ進む予定。次男も、おそらく全寮制のどこかの学校に行くと思われます。そうなると、ついに子どもがいない暮らしが始まるのです。
 
 子育てフェーズが終えようとしている今、一抹のさみしさを噛みしめています。子育ては一生続く、とも言いますし、完全に終わるわけではないけれど、わたしの raison d’être (存在理由?)の一つが消えるような気がしています。

 信子さんも、昨年より三人のお子様方が皆さんパリにて就学されて、ご主人とお二人の生活となったのですよね。どのような心境でしたか? わたしから見ると、信子さんは子育て中からお仕事も積極的にされていて、とてもスムーズにスライドされていて羨ましい限りです。

 わたしは、子どもが生まれてからというもの、時折フリーランスとして働くことしかしていません。これは望んだことのようでもあり、でも完全に納得しているかというと、そこも怪しくて。この先、少しずつ仕事を増やしていきたいけれど、幾つか考えていることもあるけれど、ものになるかしら。ーーそんな不安と期待が、わたしを落ち着かない気持ちにさせるのです。

 まとまりがなくてごめんなさい。フランス人と結婚し、日仏ミックスの家族を引っ張っている、物を書くのが好き、アールドヴィーヴルが好き、と、共通項がたくさんの信子さんに聞いてもらいたくて、長々と書いてしまいました。

 お時間あるときにでも、信子さんの近況もお知らせくださいませ。
そちらも季節の変わり目ですね、お風邪など召しませぬようどうぞご自愛くださいね。

かしこ
美紀

追伸:
写真は先日訪れたドーヴィルの海です。この日も雨が降っていましたが、夕方になって太陽が顔を見せてくれました。

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