往復書簡㊺:親愛なる信子さんへ

わたしたちの往復書簡

 8月8日、ベルサイユにて

 青空広がるベルサイユからボンジュール!
 ……なんて、そんな柄でもないのですが、今日はほんと、ボンジュール、と朗らかにフランスぶりたくなる日和なのですよ。空は透き通っていて、陽射しは、まるで山でのそれのように遮断するものがなく、輝きたっぷり、そして紫外線たっぷり。一昨日くらいから少しずつそんな陽気になっていて、そんな中、昨日はパリへ行き、友と一緒に左岸からグラン・パレまで歩き、タピスリーの展示会を鑑賞し、と、「パリのいいとこ取り」な一日を過ごしました。
 それで、今朝も朗らかで「ボンジュール!」気分なのです。

 そちらは暑さが厳しいようですよね。先日のお手紙の、「暑さが追いかけてきます」という一文に、日本の執拗な熱気が蘇ってきました。
 また、この夏「フランスにいる間はいろんな所に行って、いろんなことを考えました」と書いてらっしゃいましたね。うん、フランスは、場所によっていろんなプロフィールがある国なのですよ。

 パリなんて、カルティエごとに、キャラクターが異なりますものね。昨日わたしが歩いた左岸のサンジェルマン・デプレや、アンヴァリッドの辺り、そこからプティ・パレ&グラン・パレの一帯は、わたしの中では「古き良きパリ」「美しきパリ」。いつ歩いてもポジティブな気持ちになります。
 モンマルトルの辺りは、「古き良きパリ」だけど「かわいい(キッチュな?)パリ」。
 13区に至っては、道ごとに雰囲気が変わっていくので、歩いていても飽きないですし。
 地方都市は、数えるほどにしか訪れたことがありませんが、「シャッター通り」のように廃れてしまった村でも、隣の村は元気だったりしますよね。

 そんな風に、いろんな要素が混じり合って一色になるのではなく、個のまま存在しているのがパリの、フランスの良さであり、危うさなのだと思います。今、わたしはベルサイユという18世紀にタイムスリップしたような街に根付いているので、たまに訪れるパリが楽しく感じられますが、学生時代やCA時代は、旅行やフライトでパリに来ると、ざわざわと不安定な気持ちになったものです。……もしかして、旅というものは帰る場所がしっかりあるから楽しめるものなのかもしれませんね。

 信子さんは「日常の出来事から引き出す幸福などについての考察」的なアプローチで文章を書いている、という気づきがあったのですね。なんて興味深いのでしょう。うんうん、確かにそうかもしれません。こちらの往復書簡に書かれていることも、Esseにて連載されているのも、前向きさがある考察的な文章ですものね。そして、それは「proposプロポ =随想、哲学的コラム」というのですね。新しい言葉、書き方のアングルを知ることができて嬉しいです。
 文章を書くというのは、識字率ほぼ100%の日本人なら誰にでもできる行為ですが、人それぞれの書き方があって、そこから人柄、考え方などが垣間見えて、ほんと、面白いですよね。

 そうそう、先日お会いした方より、写真と文章を綴られた小さなブックレットを頂きました。スマホで撮られた写真と、その写真に重なるような既存の詩や文章を引用したもの、または創作した文章が記してあって、とっても素敵なのです。商業用ではない、私的なブックレットですから、引用も自由。お聞きしたところによれば、アプリがあって簡単に創れるそうです。 
 
 このように文章とビジュアルを組み合わせるという表現方法は、今の時代に合っているなぁ、と感じました。で、それが手軽に(いや、編集作業なそれなりに大変だと思いますが)できるというのは、素晴らしいことですよね。かつてフランスでエッセイやプロポが生まれ、その後紙による出版があって、近年ではブログやツィッターそしてインスタなど、ネット上でより手軽に表現・発信できるようになって。
 これからは、いろんな考えが、いろんな形にて、表現されていくんだろうな、と、わくわくしています。わたしも、わたしなりの方法で、わたしらしい形で、表現をしていきたい、と思っています。

……と、まさに「徒然なるままに」書き連ねましたが、この辺で筆をおくこと(←この表現も、ね)にします。
 この夏はバカンスは計画していなかったのですが、下旬に南の方に行ってみることにしました。次回お便りするときは、帰って来たあとですので、ご報告ができそうです。ペレ家は、8月はどのように過ごされるのでしょう。暑さが厳しいとのこと、どうぞお身体を守りながらお過ごしくださいね。

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