2025年11月某日
親愛なる信子さんへ、
こちらのお手紙がお手元に届く頃、わたしも日本に帰省している予定です。出発する前、ベルサイユにて、このお手紙をしたためています。11月のベルサイユは毎年雨が多いのですが、今のところは青空が頑張ってくれています。それでも歩道は枯れ葉の絨毯。陽も短くなっていて、季節は着々と冬支度に入っている、そんな移ろいの日々です。
それにしても、こうしてテーブルの往復書簡を書いていると、自分の傾向が見えてきますね。 わたしは、空の色、街の空気と融け合うようなクロスを選ぶことが多いようですね。装いも、同系色コーディネートが好きですし、スタイルとしては、クラシックというか、ベーシックというか。どうやらわたしはそういう人なんだな、と分かってきました。
信子さんのテーブルを拝見していると、色使いが本当にお上手。アクセントカラーとか、コントラストを楽しむとか。先月のオレンジと青の配色も然り。バランスをしっかり押さえていてさすがです。また、信子さんの、クラシックなお皿とモダンなテーブルを併せたり、という、「今」を感じられるスタイルも素敵です。東京という街にとてもフィットしているように感じます。

さて、今月のテーブル。11月になると、わたしは、この紺ベースのクロスを広げたくなります。こちらの布は、モンマルトルの丘の麓にある布地街で見つけたもの。題して、「名画クロス」。幅が微妙に足りなかったので、同系色の(!)紺色の布で縁取り、クロスに仕上げました。名画がプリントされた遊び心ある柄ですが、色合いが落ち着いているので、ふざけ過ぎず、使いやすいです。そして、「うわ、面白いクロス」「あ、この絵、知ってる!」と、食卓での会話の、アイスブレークになるので、ありがたく。
このときは、外が雨模様の日だったので、少し明るさを、と思い、クリーム色のプレイスマットを重ねました。
テーブルを飾るというのは、小さなことですが、テーブルクロスを変えるだけで部屋の雰囲気が変わって、少しだけですが、暮らしが楽しくなるんですよね。でも、時には「小さな努力」すら、面倒に感じてしまうこともあって……。そんなときは、ぱっとクロスを広げたときの、あの爽快感を思い出して、がんばろ、と自分の背中を押しています。
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テーブルセンターに置く花は、数年前より、自由に考えられるようになりました。それ以前は、「花屋さんでブーケを作ってもらわなくてはならない」と固く考えていたのですが、ある時に、敬愛するフラワークリエーターのYさんから、「家のお花は、水遣りも適宜できるんだし、花も枯れたら差し替えればいいのだから、自由に、好きなようにしたらいい」と諭されて、以来花器も、お皿などを代用したり、自由に考えるようになりました。
今回のお花も、フルーツ用のバスケットに挿しました。もちろん、そのままでは水を入れられないので、浅めのボウルに挿して、そのボウルをバスケットに入れて、出来上がり。
その他、ソース用のお皿、ソーシエールを使うこともあれば、エッグスタンドをつかったり。テーブルの花はあまり高さがない方が落ち着きがよく、また大きくない方がテーブル上の場所を取らないので、小さめの食器類は重宝します。

言わずもがなですが、食卓は料理を乗せる場ですので、土が見えるものなど、不衛生なアレンジメントはNG。でもそれ以外は、創造性を働かせて自由に楽しんでくださいね。

