マリーアントワネットという女性①

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東京富士美術館収蔵の、マリーアントワネット像。 ヴィジェ=ルブラン画

わたしがマリーアントワネットと出会ったのは、昨年のことでした。
え? みきさん大丈夫ですかって?
大丈夫です、ご安心ください。
本を通して出会った、という意味です。
幾らベルサイユに住んでいるからと、マリーアントワネットの亡霊に会ったりしませんって。
(……実は亡霊に会えるという伝説もあるらしいのですがその話はまたいつか)

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マリーアントワネットと言えば……。

最初の出会いは、池田理代子さんの『ベルサイユのばら』。
皆さんもお読みになられたかな?
連載されていたのは、1973~とのこと。わたしもその昔は漫画少女でしたが何故か「ベルばら」には興味がなかったのですよ。思うに、ああいう壮大な運命や、王妃だ、男装麗人だ、というものに、自分をリンクできなかったのだと思います。世界観が小さいティーンだったんだな……。
ま、そんなわたしが、なぜかフランス人と結婚して、なぜかベルサイユに住んでいるわけで、人生は何が起こるかわかりませんね……。

フランス語版ももちろんあります!

そのベルサイユで知り合ったのが、翻訳家のダコスタ・吉村花子さん。
彼女は、若き頃に「ベルばら」に嵌り、いつかはベルサイユに住みたい、と遠い未来まで見据えてフランス文学を学び、留学したリヨンでは歴史を学ばれます。無計画なわたしとは正反対です。
そして、今では夢を実現されベルサイユに住まわれていて、大好きなフランスの近代史書を中心に翻訳されているという方なのです。訳された本は何十冊にも及ぶ大家なのに、とっても気さくで素敵な方でもあります。

花子さんのマリーアントワネット愛を聞くうちに、「まずは、ベルばらでも読み直しますか」と重い腰を上げたのが昨年のことでした。
素晴らしいですね、池田理代子さん。20歳そこそこで描いたと聞いていますが、フランス革命の明暗両方を描かれているし、フランス革命の頃のことをさぁーと知るにも良いと思います。

ベルばらは女の自立を描いている!

花子さんには、わたしが主宰するベルサイユでのサロンで、ベルばらファンのために講義をしていただいていまして、その中で「ベルばらは女性の自立について描かれている」とおっしゃいます。

たとえば、オスカルは架空の人物なのですが、何故男装麗人にしたのでしょう、という質問には、
「思うに、池田さんは悲劇のヒロインなる女性像ではない、勇敢で有能な女性を描きたかったのではないか」
と。また、マリーアントワネットに関しては、
「とある歴史上の悲劇のヒロインとしてではなく、自立していく女性として描いている」というのです。ベルばらを読みなおした割には、そこに気づかなかった自分が残念ですが、こうして指摘していただいてよかったです。

考えてみましょう。
マリーアントワネットはライバル国のプリンセスでフランスに王太子妃として嫁ぐという、浮世離れした境遇にありますが、そこを乗り越えて考えると、フランスに来たのはまだ14歳のときです。何不自由なく育った箱入り娘ですよ。大した教育も受けていませんでしたし、勉強も嫌いだったみたいではありませんか。まだ自我が確立できていないのに思春期にいる、そんなよくいる不安定なティーンです。
そんな子は、ぐいぐいリードしてもらわないと宙ぶらりんでしょう。でもルイ16世は最期まで、ぐいぐいとは正反対のタイプです。

ゆえに、マリーアントワネットは一人で成長しなくてはいけません。
間違いを犯します。
バカなこともします。
恋にも落ちて、
やがて子どもを産みます。
世相が変わっていきます。
革命が起きます。
その過程で、自分の置かれている立場を理解し始めます。
思うに、バックボーンには信仰もあったことでしょう。
自分はどう生きるべきなのか、と考えます。
やがて、それはどう死ぬべきなのか、と同じ意味だと悟ります
最後は逃亡を勧める声を抑え、王妃として処刑台に上ることを決めたのです。

享年37歳。
無垢な少女が、一人の女に成長する歩みを描いている、それが「ベルばら」だと、花子さんは言うのです。

このお話を聞いてから、わたしも一気にマリーアントワネットに親近感をもちました。
わたしは、ようやく、自分の置かれている立場を理解し始めたところかな。
まだどう生きるべきかは見えていないけれど、いつか道が見えてくるのでしょうか。
願わくば、悲劇が少ない道中であってほしいけれど、そんな甘えたことを言っててはダメかもね。

と考えていくうちに、もっともっとマリーアントワネットのことを知りたくなりまして。
次回などんな本を手に取ったか、紹介しますね。

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